意地悪上司は私に夢中!?
「最近絶好調じゃない」

珍しく社食で一緒になった戸田さんは、ニヤニヤしながらトレイを向かいに置いて座った。

「絶好調って何がですか?」

「永瀬さんとのやりとりよ。この前はちょっと心配したけど、今まで以上にコントっぽ叶ったわね」

「そうですよね、私も思ってました」

隣で花もクスクス笑う。

…コントっぽい?それは心外だ。

「私はあの人にいじめられて、それに言い返してるだけなんですってば」

「それがコントっぽいって言ってるのよ」

今日は偶然にもみんな揃ってうどんだ。

戸田さんはずるずるっと気持ちよく麺をすすったあとに口元をナプキンで拭く。

「前にいたアシスタントの子はね、すごくおどおどしてたの。
仕事してる時の永瀬さんってちょっと怖そうな感じじゃない?
今みたいにコントみたいな掛け合いもなかったし」

戸田さんは今の課には4年いる。

島は違えど、永瀬さんのこともきっとよくわかってるんだろう。

「だけど鈴原さんは、永瀬さん相手に臆せず言い返してたから。
最初はヒヤヒヤしたけど、今ではいいコンビね」

…それは多分、私が永瀬さんのミスを指摘したことがあるだけで。

そう言えば、それからだんだんケンカ腰みたいになっていって、今の状態になったような気もする。


考えてみれば、あんなんだけど一応チームリーダーだ。

たかがアシスタントの私があんなに言い返すのも本当はすごく失礼なことなのかもしれない。

なのに、その失礼極まりない私を好きってどういうこと?

…永瀬さん、Sに見えて意外とMなのか?

私に怒られるのが好きなのか?

そんなわけないよね。

「…にしてもコントって言うのやめません?」

「…夫婦漫才?」

「もっと嫌ですっ」


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