いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
9.
連れていかれたのは中層階。

「散らかってて、ごめん。ここはさ、元々投資目的と税金対策に持ってた物件なんだ。しばらく前からウェブデザインの機材や仕事関連の物を置いてたんだけど、兄さんが文香と結婚するならそろそろ家を出る事を考えなきゃいけないからさ。最近は生活用品も増やしてるから手狭になっちゃって」

ソファやローテーブルに無造作に置かれた衣類や雑誌を手早く片付ける涼介はくつろいでくれと勧めるけれど、私の足はなかなか進まない。

「手狭……ではなくない?」

國井の御曹司なんだからこのあたりの常識が私とズレてるのは想定内なはずだけど、流石にズレ過ぎかもしれない。
開け放たれた仕事部屋とリビングを中心に電子機器が沢山あって確かに物は多いけれど、2LDKの一つ一つの部屋が大きいから圧迫感は全くない。広々としたリビングだけで、一般的な一人暮らしの部屋はすっぽりと収まってしまうだろう。
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