鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
トラウマ


「羊が一匹、羊が二匹…」

そんなベタなことをしてみても、全然眠れない。

瞼を閉じても、すぐに課長の顔が浮かんで目を見開いてしまう。

何回寝返りを打ったことか。

普段したこともない腹筋運動をしても、結局10回も続かなくて断念したり。

そんなことを繰り返しているうちに、時刻は午前5時過ぎ。

「一睡も出来なかった…」

ノロノロと起き上がって、シャワーを浴びることにした。

生まれてこの方、一睡もせず朝を迎えたことなんてなかった。

にもかかわらず、しっかり覚醒している。

シャワーを浴びると更に頭が冴えてくる。

身支度を整えると、いつもよりだいぶ早く会社に向かった。

いつもと同じ風景、雰囲気なはずなのに、昨日までとは全く違う感じがした。

首元に光輝くハート型のネックレスが、昨日のことが夢ではないと証明している。

足取りは軽い。

けれども、これから仕事。

いつまでもフワフワと浮わついているワケにもいかない。

課長の顔をまともに見れるか、少し不安だけど、仕事でミスして課長に迷惑をかけることはしたくない。

入社2年目の私にも、それくらいの意地はある。

首元のネックレスをギュッと握ると、不思議と気合いが入る気がした。

エレベーターを降りて、廊下を歩いていると、やっぱり今日も聞こえてくる声…。
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