幼なじみの溺愛が危険すぎる。 〜中学時代〜
ライバル出現?
【side りり花】


「吉川、先週末、星薇女学園の文化祭にいただろ?」


帰りのホームルームが終わると、

学級委員の瀧澤くんが日誌を片手に私の席までやってきた。



「どうして知ってるの?」



先週の土曜日、ずっと憧れていた星薇女学園の文化祭に行った。



星薇女学園は校舎も綺麗だし、
制服も可愛いくて、ずっと憧れていた。



「うちの姉ちゃん、星薇だから俺もあそこにいたんだよ」




「そうなのっ⁈ いいなあ、あのセーラー服、可愛いよね!」



思わず身を乗り出すと、
瀧澤くんが笑いながら前の席に座った。



「まぁ、俺が通ってるわけじゃないけど。
知りたいことがあったら、姉ちゃんに聞いておくよ?」



「本当?!でも、成績が全然足りないからなぁ…」



情けなくて、思わず苦笑い。



「私、数学、苦手でね。
正直、今日の授業も応用問題はお手上げだったし。

星薇女学園は数学が難しいんだよね」



すると、学級日誌を書いている瀧澤くんがその手を止めて、顔をあげた。


「数学で分からないところがあったら教えてやろうか?国語は勘弁だけど」


余裕の表情を浮かべる学級委員の瀧澤くんは面倒見がよくて、

みんなのお兄ちゃん的な存在だ。



「教科書とワーク、持ってる?」



そう言って瀧澤くんが私のカバンを指差した。



「持ってるっ! でも、本当にいいの? 」


「どのあたりが苦手?」



机を向かい合せに並べて、

瀧澤くんに数学を教えてもらっているうちに
あっという間に下校のチャイムが鳴った。



瀧澤くんの教え方は、すごく丁寧で
先生より、ずっとわかりやすかった。



さすが瀧澤くんっ!



チャイムが鳴り終わると、
教科書をカバンにしまい、


瀧澤くんに謝った。



「ごめんね、下校時間になっちゃったね。
瀧澤くん、部活は大丈夫だった?」



気が付けば、夕陽が差し込み
教室がうっすらとオレンジ色に染まっている。




「俺は部活入ってないから大丈夫。
それに、俺、将来教師になりたいんだよ。

だからさ、今日は俺のほうこそ貴重な機会をありがとうございました!」


そう言って瀧澤くんはおどけて頭を下げた。


優しくて面倒見が良い瀧澤君が
女子に人気があるのがよくわかる。



「こちらこそ、瀧澤先生にご教授いただけて光栄です」


瀧澤くんに向かってぺこりと丁寧にお辞儀を返すと、

瀧澤くんが吹き出した。


「ご教授ってなんだよそれ」


「使わない?」


「使わないよ」


「そっか」



空手の道場ではよく使うんだけどな…



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