君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「本当ですか?

やります、絶対やる!!どんなヴァリエーションでも覚えてきますから……!」


嬉し過ぎる彼の申し出に、大興奮で返事をしてしまう。


「ヴァリエーション?ステップの種類ってこと?複雑なことは何もいらないよ。

俺のリードに合わせて踊ればそれでいい。

ただのパーティーの相手役をしてくれればいいから」


「そうなんですか」


しかし、ただのパーティーの相手役と聞いてひとつの疑問が浮かんだ。


「何で私にそんなことを望むんですか?

あなたなら、いくらでもお相手には困らないかと……」


その質問に彼はにこやかな笑みを浮かべて、


「俺の知ってる女ってガツガツしてて困るんだ。君ならそういうこと頼んでも後腐れ無さそうだし」


と、高揚した気持ちを撃沈させる一言を放った。


『後腐れ無さそう』


それが私への評価。


神秘的なピアニストだと思っていた彼が、とっても世俗的な男性に見えてくる。


なるほど、……なるほどね。
あなたの回りはガツガツした女性だらけなんですかそうですよね見た目通りそりゃあモテまくるんでしょうね。


と頭の中だけで捲し立てて、彼のような女を見下した人は絶対好きにならないぞと誓った。


この人は、何かの理由で女性に近寄られたくないだけなのだ。私はそのための盾に選ばれた。そのことを受け入れて仕事に徹しよう。


「良いでしょう。後腐れなく立派につとめあげて見せますっ」


「そう?

それなら、助かる……」


少しだけ語気を強めた私の返事に、彼は不思議そうに目を丸くした。
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