侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?

エセルsaido

急いでフロアへ戻ると、招待客の皆様は一様に深く頭を下げていらっしゃいます。

その中心には、滲み出る威光を纏った初老の紳士が、お付きらしき数名の方と共に立っていらっしゃいます。
紳士は私達が近付くや、目を弓のように細められ先に声を出されました。

「おおウィザーク来たか、一言祝いをと思ってな……。誠めでたい限りだ」

良く響く低音でおっしゃいました。温かみのあるお声です。

「陛下、有難き幸せに存じます。これは妻エセルでございます……」

「ああ良い良い、堅苦しいのは抜きだ。ウィザーク聞いたぞ、結婚式の誓いのキスは、記録的な長さだったようだな?」

国王陛下は大きな声で楽しそうにお笑いになり、レイモンド様は真っ赤になってしどろもどろです。
あ、向こうの隅にいるリードマンは、下を向いて笑いを噛み殺しています。

「仲が良すぎると子が出来にくいとも聞くぞ、大丈夫か?」
揶揄うようにおっしゃって、陛下は高笑いなさいました。

他の皆様同様、私も調子を合わせて和やかに微笑んでいますが、ほほほ陛下、そもそも彼はお金を払いたくないから私に結婚を申し込んだだけですし、仲が良くないので、もうお腹には子供がおりますのよ~。
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