御曹司のとろ甘な独占愛
 壁掛け時計を見上げると、休憩時間は残り三十分程になっていた。

「……お昼ご飯、どうしようか」

 三十分で食事に行ける範囲は限られている。
 しかし近所では社員やお客様の目があって、二人でランチなんてできない。

「俺としては、このまま一花を食べてしまいたいところですが……」

 伯睿は膝の上に乗る一花の肩に顔を埋めて、ため息を吐く。
 彼女のうなじに唇を寄せて、柔らかな肌を食んだ。

「やっ! 伯睿……っ!」

 また急に押し寄せてきた甘い熱に、一花は強く目を瞑る。

 そんな様子の一花をチラリと見てから、伯睿は肩をすくめた。

「仕方ない。……近くのカフェから、ベーグルサンドとコーヒーでも買ってきます。一花はここで待っていて下さい。――絶対に、鍵を開けたらダメですよ?」

 子供に言い聞かせるように一花へ言いつけて、伯睿はジャケットを手に取る。
 一花の前髪をそっと払うと、ちゅっと音を立てて、額に優しく触れるだけのキスをした。
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