御曹司のとろ甘な独占愛
 一花の腕を引っ張り、強制的に指輪をはめ――キスするような距離で舐めるように彼女を見つめる男に、嫌悪感と嫉妬心が膨れ上がる。

(俺の大切な宝石を、他人に鑑賞されないように閉じ込めておけたらいいのに)

 未だ燻る独占欲。
 伯睿はぎゅうっと締めつけるように切なく、苦しい胸を拳で抑える。

「……一花。今から、俺に時間をくれますか」

 その問いかけは、すでに答えが決まっているようなニュアンスだった。
 一花は、どうしよう、と目だけで伯睿を伺う。

(このまま伯睿の部屋で過ごすのもいいけど……もしも、誰かに見つかったりしたら――)

 伯睿は一花の言葉を塞ぐように、彼女の頬へ唇を寄せた。

「大丈夫です。だから、ね?」

 低く甘い声音で囁かれ、耳がそわそわとして落ち着かない。
 伯睿の熱い舌先で耳朶を舐め上げられ、一花はきゅっと目を瞑った。

「……なにするの?」

「なんでしょう? ――俺だけが所有することを許された、世界に一つだけの宝石の鑑賞……かな?」

 ソファに座っていた一花をお姫様抱っこで、自分の膝の上に座らせる。
 一花の熱を帯びるような視線と絡み合ったのを合図に、伯睿は唇に噛み付くようなキスをした。

 唇を割り、柔らかな熱を絡めとる。
 無音の空間には、二人の息遣いとキスの音だけが響いた。
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