御曹司のとろ甘な独占愛
 ミャンマーで採れたロイヤルブルーサファイアは、幼い頃に二人で見上げた夜の星空の色によく似ていた。

 深い紺色に星屑のようなダイヤをちらせば、まるで天の川のような美しい輝きが生まれるだろう。

 中国語のテキストを読み上げながら単語の発音の練習をしている一花の、日本語を発音する時とは少し違った声音を聞きながら、ふと詳細を描き込んでいた鉛筆を止める。

 窓の外から降り注ぐ陽の光が、彼女の美しく流れる髪に反射した。キラキラと眩い、優しい時間が生まれる。

 神妙な表情で中国語を暗記している彼女の横顔に触れたくなる衝動を抑え――滲むような幸福感に目を細めると、伯睿は席を立った。

「俺は少しアトリエに籠ってきます。夕飯の時間になったら呼んでください」

「はーい!」

「……そうだ。今日の夕飯は何かな?」

「今日の夕飯は、鮭の西京焼きです!」

 テキストから顔を上げた一花が、にっこりと微笑みを浮かべる。
 伯睿はこんなやりとりが出来る幸せな時間を噛み締めながら、「それは美味しそうだ」と頷いた。
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