御曹司のとろ甘な独占愛
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 貴賓翡翠のショーケースには、夏を思わせる宝石たちに加えて、ピンクダイヤモンドやモルガナイトと氷翡翠の甘い組み合わせが並ぶようになった。

 人々はそんな翡翠たちに「梅雨を彩る紫陽花のようだ」と重ねたり、「ジューンブライドの初々しい様子」を思い浮かべる。

 七夕の織姫と彦星の伝説に由来する七夕情人節も近いことから、「恋人への贈り物にピッタリだ」と男性のお客様がお買い求めになることもあった。


 梅雨の台北は、午後からスコールになることが多い。
 午前中は多くの人で賑わっていた店内も、お昼過ぎにはの突然のスコールのせいで、一気に客足が遠のいた。

 今もエントランスのショーウィンドウやドアに、暴風雨が叩きつけている。
 沢山の照明でいつもは明るい店内も、こんなお天気では薄暗く感じた。

 店内から出られなくなってしまったお客様には、コーヒーや紅茶などのドリンクが配られた。皆様くつろいだご様子で、スコールがおさまるのを待っている。
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