御曹司のとろ甘な独占愛
「つれないね。僕とキミの友情の証として、少しくらい付き合ってよ」

「私達って、いつ友人になったんですか……」

「それなら愛情の証として?」

 慧は誰もが恋に落ちるような甘い声色で囁く。
 面白い玩具を観察するかのように鳶色の瞳に、一花は内心面倒臭いと感じながら溜息をついた

 日本語でそんなやりとりをしているとも知らず、女性販売員が一花を呼びに来る。
 彼女は一花にコッソリと耳打ちした。

《ねえ、日本からのお得意様? 劉副社長と同じくらいイケメン~っ! コーヒー、私が運んでもいい?》

 慧が中国語を理解できているのかは知らないが、彼は何も聞こえていない様子でニコニコしている。
 この人、翡翠嫌いですよ! しかも商談じゃないです! とは言えず、一花は苦い表情で《はい》と応じた。

 女性販売員は《ありがとう!》と頬を赤らめ、とっても嬉しそうにホットコーヒーを慧のテーブルへ運ぶ。そのテーブルに、私用アドレスを書き込んだ名刺を置くのを忘れなかった。
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