御曹司のとろ甘な独占愛
 貴賓翡翠の今年の夏を代表する作品の一つ、氷翡翠とダイヤモンドの指輪。

 春夏コレクションが掲載されたカタログには、同デザインのイヤリングと共に掲載されている。目の覚めるような美しい広告ビジュアルに、流麗なフォントで『きらめく星の下、あなたへ想いを告げる――』とイメージコンセプトが書かれていた。

「こちらが今季代表作、氷翡翠の指輪でございます。本日、台湾本社より到着したばかりなんです。どうぞ、お手にとってご覧ください」

 一花は指先を柔らかく揃えた手のひらを商品へ丁寧に向ける。

「わあぁ、キレイね~っ!」

 この宝石店で一番高価な翡翠を前に、常盤様がうっとりとした声を上げた。
 彼女が指にはめると、氷翡翠の周囲にあしらわれたダイヤモンドがキラキラと照明を反射する。

「これほどに透明な氷翡翠はとても珍しいんですよ。他鉱物によるインクルージョンが全く浮かんでいない氷翡翠は、ほんの僅かしか採れないそうです。
 もちろん、他の鉱物特有の色味が出ているものも美しいので、無色透明が一番美しいとは、一概には言えないのですが」

 一花は氷翡翠の指輪の説明をしながら、本当に楽しそうな笑顔を浮かべた。

「そうよね、わかるわぁ。だから翡翠って、ついつい色々な色味を集めたくなっちゃうもの」

 常盤様は優美な表情で頬に手を添え、ほうっと溜息をこぼした。
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