御曹司のとろ甘な独占愛
 彼女の他の指には、貴賓翡翠の春の代表作が輝いている。
 そちらも氷翡翠に負けず劣らず美しい、希少性の高いラベンダー翡翠だ。

 『いつか、きっと――それは、今』というコンセプトと合わせて、悩みごとを全て吹き飛ばしてしまうかのような、そっと背中を押してくれるようなデザインに、「カタログを眺めるだけでも元気が出た!」というお客様も多かった。もちろん、一花もその一人だ。

 ラベンダー翡翠がセンターストーンとしてセッティングされた指輪には、メレダイヤと呼ばれる小粒のピンクダイヤモンドが輝いている。とても上品な、恋するマーメイドのような指輪だった。

 今回の新作も本当にキレイ……、と常盤様は何度も手の角度を変えながら、氷翡翠に集まる光を見つめている。

 氷翡翠の美しい透明な光が、その指先から彼女に染み込んでいく。
 その様子に、まるで女神と天使の出会いのようだと、一花はうっとりと魅入った。

「わあぁあ、美しいです……! 本当に、常盤様にとってもお似合いです……っ」

 美しいものに素直に美しいと伝えることが、一花のモットーだ。語彙が少なくても、うまく表現できなくても、素直に心のままに美しいと伝えるようにしている。

 そんな嫌味のない、本心からの感嘆だとわかる一花の言葉に、常盤様が上半身を揺らして楽しげに笑った。
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