契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
まだ栄養課の事務室はカーテンが閉まっていて誰もいない。

今日はちょっと早く着きすぎたかな。

カーテンを開け、年代物のポットにお水を入れ、これまた年代物のコーヒーメーカーをセットする。

コーヒーが沸く音を聞きながらデスクに突っ伏していたら、ドアが開いて入ってきたのは北川だ。

「おう、おはよう。なんだよ、昨日よりへこんでないか?」

「…あっ!」

鞄をデスクに置いていた北川がびくっと肩を揺らす。

「な、なんだよ」

北川のフォローをしなきゃいけないのをすっかり忘れていた。

「実は、先生に北川と2人で歩いてるのを偶然見られて…」

北川は途端に青くなって頭を抱えた。

「マジか…それで喧嘩とかになってんのか? ごめん」

「ううん、今日NSTで先生と一緒になるから、気まずくなったら困るなって」

北川は眉を寄せてうーんとしばらく唸る。

「俺が余計なこと言うとますますこじれそうだよな。
聞かれたら正直に答える。
それでいい?」

「うん。ごめんね。迷惑かけて」

「いや。帰ったら先生とちゃんと話して仲直りしてくれよ?」

北川の言葉に頷いたものの、仲直りなんてできるんだろうか。

私と悠さんが結婚生活を続けるのはもう難しいのかもしれない。

悠さんが話したいと言ったのも、きっと私たちの今後のことだ。


結局NSTのときにはなにも聞かれず、悠さんは普段と変わらなかったと北川が教えてくれた。


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