元社長令嬢は御曹司の家政婦
「二階堂さん、資料作りお願いできる?
例年と同じようにまとめるだけだから大丈夫だと思うけど、分からないことがあったら聞いてね」

「どうして私がそんなことしなければいけないの?あなたが自分でやったらいいじゃない」
 

始業後、忙しそうに資料をまとめる同僚に声をかけられたけど、ぴしゃりとそれを拒絶する。

やりたくても、資料のまとめ方どころかグラフの作り方もパソコンの使い方も分からなくてやれない。でもこの私が、「できない」なんてみっともないことを口にできるわけがないので、必然的にそういう答え方になってしまう。


「あの、......前から言おうと思ってたけど、あなた社会人としてありえないわよ。今だって仕事中だっていうのに何もしてないし、あなたに不満がある人はたくさんいるんだから」

「じゃあ解雇したら?
あなたにその権限があるなら、だけど」

「あなたね......、もういい分かった」


何が分かったのか分からないけど、ふわふわした髪型の彼女はきゅっと口を結んで、そのまま自分の席に戻った。


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