元社長令嬢は御曹司の家政婦
言われてみれば、ママも私も無責任の塊のような人間だけど、それでもケンカなんて一度もしたことがなかった。

お金持ちだった頃はこんな風に言い合いをしたことなんて一度もなかったのに、貧乏は心さえも貧しくするというのは本当だった。


「美妃ちゃんがワガママな子になってしまったのも、全て私とママの責任だ。本当に申し訳なかった。
私とママはこれから心を入れかえて心機一転やり直すから、美妃ちゃんも一人で強く生きていってほしい。
それでもこの時世に何のスキルも経験もない美妃ちゃんにいきなり一人で生きていきなさいというのも酷だろう。そこで、私の昔からの知り合いに便宜を図ってもらえるようにしておいたから困ったらそこを頼りなさい。これが父親としてできる最後のことだ」


パパもママも申し訳ないとは言いながらも、もう決定事項だと言わんばかりの有無を言わせない態度で立ち上がった。そしていつの間に準備したのか、それぞれスーツケースをもって、じゃあお元気でと立ち去ろうとする。

え?今?急すぎない?
心の準備もできてないし、展開が急すぎてついていけない。


「ちょっ、待ってよ。待ってってば。
せめてどこの国に行くかぐらい教えてよー!!!」


ひき止めてもまるで聞いてもらえず、一ヶ月後までには家を出ていってねと言い残し二人は出ていってしまう。後には、私の叫び声だけがむなしく響き渡った。



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