銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
すれ違う人々が私達に好奇な視線を送る。

ああ〜、もうこんなの恥ずかし過ぎるわ!

耐えられず、不本意ではあるがジェイの胸に身を寄せ顔を隠す。

すると、ギリアンとかいう宰相が血相を変えて現れた。

ああ、宰相にまで見られるなんて、もう最悪。

出来るだけジェイの腕の中で大人しくして存在を消す。

どうか……私のことには触れないで。

そんなささやかな願いが通じたのか、宰相は私には目もくれず、慌てた声でジェイに声をかける。

「ジェイ!そんなずぶ濡れで……。早く着替えを」

ジェイのことを心配する宰相を見て思う。

名前で呼んでいるし、ふたりは親しいのだろうか?

「痛み止めの薬草と煎じ薬、それと湯の用意を至急頼む」

ジェイは立ち止まらず、私を抱えたまま宰相に口早に言う。

「痛み止め?まさか怪我を?」
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