私たちは大人になった
その2 深く考えない

親友が三年ぶりに復縁した元彼と、交際一年で結婚した。

俗に言う、元サヤだ。
仲間内では、あの二人は長い喧嘩をしてただけだなんて言う人間もいるけれど。
男の方が驚くべき執念で、もう一度彼女を口説き落とした結果だということを私は知っている。

幸せを掴むために大切なのは根気なのだと、つくづく思う。


「いや~、めでたい!」
「さっきからそればっか」
「だって、そうだろ?10年だぞ。ほんっと長すぎた春にならなくってよかった」
「安川君みたいに?」
「…留美、それは言うな」

大学時代からの親友であるかなえの披露宴に出席した後、二次会で暫くぶりに大学のサークルメンバーと顔を合わせた。
かなえも、新郎の宇野君も、さっきから私の隣でやたら「よかった」を連呼する安川君もその一人だ。
どういう訳か、サークルの男子メンバーの間では二人は一度も別れていないことになっているらしい。結果的には似たようなものだから今さら真実を広める必要などないだろう。
そして、この安川という男は、長らく付き合っていた碧(同じくサークルの友達だ)に、浮気の末に三行半を突き付けられた過去を持つ。
かなえに聞いたところによると、碧の結婚式の二次会ではやけ酒していたらしい。

「碧の赤ちゃん、先月生まれたって」
「ああ、知ってる」
「どうして?」
「本人からはがきもらった」
「碧も律義ね~。元彼に」
「いや、旦那の牽制だろ。俺、よく覚えてないけどあいつの二次会の帰り際に、未練がましいこと言ったらしいし」
「男って本当にバカね」
「確かにバカだけど、さすがにもう碧をどうこうするつもりはねえよ」

碧に会う機会があるなら伝えといてくれと言う安川君に少しだけ同情しながら、普通はそうよねと安心する。

別れて何年も経つ恋人とヨリを戻そうなんて普通は思わない。恋人であっても、いつまでも相手を思い続けることは難しいのに。
やっぱり、今回のケースが特殊過ぎるだけなのだ。
< 10 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop