シンさんは愛妻家
勤務を終えて帰ろうとすると、部長室の電話が鳴り、
救急外来から電話がある。

「常盤先生、有沢(ありさわ)さんって知り合いですか?」

と救命医の和田。5年目の顔見知り。
人懐こいお調子者。案外デキル奴。

「ありさわ?」

「この病院のコンビニの店員さん。有沢 伊吹(ありさわ いぶき)。23歳。
髪が薄茶色のショートカットのこ。
熱が40度超えてて、さっき救急に受診に来てインフルエンザでした。
フラフラしてるから休んでいけって言ってるのに、
どうしても帰るって聞かなくて、誰かと一緒なら帰って良いよ。って言ったら
先生の名前を言ったんで…一応。
先生どこまで手を出してるんですかって、ナースが怒ってたけど…
どうしますか?センセイ?」

と少し笑った声でヒソヒソ話す。

…いや、あの子は見かけはオンナでも心は男だろ。
まあ、ここではオンナなんだろうけど…


「そんな子どもは相手にしてないけど…
ふつうに知ってる子かな…」

と少し不機嫌な声を出すと、

「じゃ、どうしますか?」

「…家に帰るって言ってるの?どうしても?」

「はい」
とクスクス笑う声。

「黙っててくれたら、今度奢るよ。
救急の出入口に連れてきて。
…車を付けて待ってるから10分後。」

と言うと

「了解です。女の子がいるお店がいいなあ」

「わかったわかった。
2、3人で上品なタイプの奴らなら一緒に連れて行ってやる。
会員制のクラブでいいか…
他言無用だぞ。」

「やった!…約束ですよ」

「『有沢さん』にだけ迎えに行くって言えよ。
ナースは面倒だから…」

「了解です」

と電話が切れた。

ありさわ いぶき

か。

面倒なことになりそうだ。
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