真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
私を胸に強く抱いて伝えてくれた彼の言葉は、彼自身の身体の中に反響して少し籠もった声となって私の耳に伝わってきた。

鼓膜を震わす彼の低くて落ち着いた甘い囁きは、腕の中の温もりと強く早く脈打つ鼓動と共に私の胸に巣食う過去の悲しみと寂しさを包み込んでくれた。

今、彼の腕の中にいる私の胸にあるのは、彼への愛しさだけ。

BGMもなく言葉もない二人きりの空間で耳をすますと、私を求める彼の胸の鼓動が語りかけてくる。

”君の胸の内を俺に教えて欲しい”

彼の鼓動と共鳴するように、早鳴りになっている私の胸は何よりの想いの証。

私は彼と自分の心音が一つに重なり合うように、ギュッと彼を抱きしめた。

すると、彼はより強く私を抱きしめて優しく髪を撫でてくれた。

「優花さんの鼓動が伝わってきます。俺と同じに早くなってる......」

「......はい」

「良かった......」

安堵感に満ちた声と共に彼の肩から力が抜けたのを感じた私は、彼からの言葉を胸に刻んでそっと身体を離した。

それから眼差しを低くして俯きながらゆっくりと唇を開くと、薄闇に”かろうじて”捉えることのできる彼の瞳に私を映しながら言った。

「広務さん、好きです......」

泣いているような顔をしていたと思う。

そう思うのは、彼も泣いているような笑顔をしていたから。

そんな笑顔を見せるから、私の胸はキュッと絞られてより強く彼を求めた。

ーー広務さん、どうか言葉以上の想いを私に伝えて。

すっかり藍色に染まった空は二人きりの車内を暗がりに変えて、言葉を交わす以外お互いの様子を窺い知る術はなくなった。

どことなく心細さが漂う夜の静寂に差し伸べられた、愛する男(ひと)の温かな指先は私の頬に優しく触れたあと、唇をなぞった。

「優花......」

彼の呼びかけに私は、目を閉じて応えた。

「ん......っ」

宵闇の中で感じた彼の熱い唇の感触は、夜の暗さで敏感になった身体中の細胞をしっとりと撫でて、この上なく恋心を震わせ愛しさを生み出した。

見えない部分を探るように。ゆっくりと口内を彷徨う、潤んだ彼の舌先に力を削がれた私は彼に、もたれかかり身を預けた。

彼の腕に抱かれて熱いキスを交わしているさなかに、藍色の空に煌めいた眩い光は始まりを告げる大輪の花。

唇が触れ合い離される、その僅かな合間に。そっと瞼を開けた私の瞳に映ったのは、夜空で輝く花々に照らされた彼の優しい笑顔だった......。

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