ぶぶ漬けでもいかが?
ミカコはけっしんした。


超絶冷血冷凍庫男、睨まれたら血まで凍ると噂のウチの社長、毎年この時期にはキラキラした包装紙の箱の山に埋もれそうになっている。



「適当に処分しろ」



これも毎年お決まりのセリフ。



「・・・お言葉ですが超高級、庶民お断り、どこぞの王室御用達のチョコレートなんかもありますが?」



「惜しいならお前が食え」



「こんな食べたらニキビがえらいことになります」



「思春期過ぎてニキビと言うな。吹き出物だ、阿呆」




「・・・乙女心てんこもりの贈り物ですよ?せめてカードくらい見はったら?」



「下心の間違いだろう」



おお、上手いこと言う。
座布団1枚。



銀のフレームの眼鏡の奥の、切れ長の瞳はいつもながら感情が読めない。甘いモノを売る会社の社長のクセに細マッチョ。今日もスーツをピシッと着こなして隙がない。






「どうせ接待で使うクラブの女とか仕事関係の柵とかとち狂った女子社員とかからだろう」




そうやけど。




「下心にも一分の恋心」





ニッコリとして、すいっと社長の目の前に薄っぺらいリボンをかけた紙袋を差し出した。


不審げに受け取り渋々という体で紙袋を開けた社長は疑惑の目をわたしに向ける。



「しば漬け・・・と退職願い?」
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