包み愛~あなたの胸で眠らせて~
心の奥深いところから声を絞り出して、広海くんはゆっくりと言葉を紡ぐ。

また視線を足元に移した彼の横顔をしっかりと見て、どんな言葉も聞き逃さないよう耳を傾けた。


『紗世になら』と思ってくれたのが嬉しい。

いなくなるまで、広海くんと話をしなかった日はほとんどなかった。

大事な、大好きな友だちだった。

私も『広海くんがいたら』『広海くんなら』と何度も思った。


広海くんと大人になるまでず一緒に時を過ごしてきていたら、もっと強くなれたのかもしれない。

臆病になってしまった自分を変えたいと思うことなく、それが正しいと思って生きてきた。

誰かに自分を理解してもらいたかった。それは多分広海くんも同じだと思う。

『紗世となら』『広海くんとなら』と。

一緒に楽しいことも嬉しいことも悲しいことも悔しいことも共感し合える存在になれたに違いない。

広海くんは時折苦しそうにしながらも今まで一人で抱えてきた思いを吐き出した。
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