振り向かせて、その先は。【2月3日完】
【振り向かせてその先は】
「社長、よかったらチョコもらってください」
「俺にはもったいないよ」
申し訳なさそうな顔をするだけで溢れる色香に、ある者はうっとりとため息を吐き。
「今夜少しだけお時間をいただけませんか?お渡ししたいものが」
「俺に時間を使うより、ゆっくり休んで欲しいな?最近忙しいって聞いたけど」
またある者は顔を覗き込まれただけで顔を真っ赤にさせた。
バレンタインだから執務室に行くまでに何人もの女性に声をかけられる。
それを自分の魅力を活用しうまく断り続ける様を秘書の立場から見ているけど、さすがとしか言えない。
「社長、朝からお疲れ様です」
「君からはまだ、あの子たちみたいに熱烈な告白を受けてないんだけど?」
するりと指先で私の頬を撫で、不敵に笑ってみせる。
この仕草は、社長がよくやる戯れでしかない。
「社長」
「冗談だ。それで?今日の予定……は」
離れようとした社長のネクタイをクイッと引っ張り、振り向かせた。

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