守りたい人【完】(番外編完)
真意を確かめるには、本人に聞くのが一番だと分かっている。

だけど、聞いた所で教えてくれるとは思えないし、はたまたどう聞けばいいかも分からない。

私と朝比奈さんの関係は、今最高潮にギクシャクしているのだから。


無理に明るく振舞うたまちゃんの言葉に、ニッコリと笑う。

きっと、ずっと私に言おうと思っていたけど言い出せなくて悩んでいたんだと思う。

薄々だけど、私が朝比奈さんの事を好きなのを感づいていたと思うから。


考えれば考える程、モヤモヤとした気持ちが渦のように大きくなって心の中に巣食う。

嫌な予感がムクムクと湧き上がってきて、不安になる。

この先の未来が見えなくて、怖くなる。

どうしたらいいのか、分からない。


目の回りそうな現実から逃げるように一度目を強く閉じた。

真っ暗になった世界の中、思い出すのは、不器用ながらも夜桜の下で私を励ましてくれた、あの言葉。

雨の中、必死に私を探してくれた、あの日の事。

不愛想だけど、誰よりも優しくて暖かい人――…。


一緒に過ごした日々を思い出した瞬間、ユラユラと揺れていた気持ちがピタリと止まった。

あんなにもモヤモヤしていた気持ちが、スッと晴れていく。


そうだ、私は誰よりもあの人の優しさを知っているじゃないか。

私があの人を信じてあげなくて、どうするの。


そう思った瞬間、目を開けてグッと力強く拳を握って前を見据えた。

フワフワと浮いていたような感覚はもう無く、地に足はついていた。


どんな事があっても、私は朝比奈さんの味方でいようと心に決めた――。

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