ホワイトデーにおくるのは。
冬の寒さが和らぎ、春の暖かさが芽吹くのを感じる三月三日の桃の節句。

日本中の誰もが、女の子の幸福や成長を願うこのときに、俺もまた一人の女の子の幸福を祈っている。

ひなまつりの、その先にある別のイベントを迎えるために。

そう思って、俺は一人ショッピングモールをうろうろしている。


どうしよう……。


もう三月だというのに、ホワイトデーになにを返したらいいのか、まったくわからないままで、戸惑うばかり。

バレンタインデーに恋人である甘奈が、俺にチョコレートをくれてから早くも二週間が経った。

ホワイトデーまで一ヶ月も猶予があるこの期間。最初はお返しなんて、特に考えていなくても、すぐに浮かんでくるだろう、と悠然と気構えていた。

だが、現実はチョコレートようには甘くなかった。

とりあえずショッピングモールに来てみたはいいものの、いったいなにを買えばいいのかわからない。これじゃ単なる散歩で終わってしまう……。

歩いても、歩いても、お店はひなまつりの特集ばかり。

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