ホワイトデーにおくるのは。
「あかりをつけましょぼんぼりに~♪」


いやいや、ぼんぼりじゃなくて、俺のひらめきの電球にあかりをつけてくれよ、と聴こえてくるひなまつりの歌に内心つっこむ。

バレンタインデーだと新年からにぎやかになるのに、なんでホワイトデーの特集って、全然ないんだろう。

いや、あったところでなにに手を出せばいいかわからないか。

それでも、なにもないよりは幾分かいいと思うのだが。

これじゃ、マップはわかるのに、何をしたら次のイベントを起こせるのかわからないRPGの主人公みたいだな……。

根気強く探し回ったが、めぼしいものはなかった。

無駄遣いはしたくないので、一円たりとも使わなかった。

結局、ただの散歩。


* * *


シミュレーションゲームの会話のスキップ機能を使ったかのように、あっさり月曜日を迎えた。

学校に登校し、下駄箱で内履きの靴に履き替えていると、


「おはよ、翔」


恋人の夏川甘奈(なつかわかんな)に声をかけられた。

同学年なのに、お姉さんっぽさがあるにも関わらず、幼さの残る童顔がなんともかわいい。

甘奈とはクラスが違うから、直接会うことは少ない。

そんな中、こうして会うと、嬉々とした女の子らしい高い声を聞かせてくれる。


「おはよ」


先週、お返しを探し回ってもなにも収穫がなかった俺は、甘奈と会うのがなんとなく気まずく、歯切れの悪いおうむ返しになった。


「なによ、元気ないわね。もっとしゃんとしなさい、しゃんと」

「お、おう」


ほんと、しゃんとしないとな。

自分ばかり叱咤激励されているみたいで、なんだか頭が上がらない。


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