さらり、と僅かに髪がすかれた気がする。
瞼は重く、まだ目を開けたくはない。

だって温かいし、なんだろう……いい香りがする。
でもきっと、目を覚ますと消えてしまう夢なんでしょ?

だったらまだ起きない。
昨日は金曜だったから今日はお休み。

そういえば社長は今日もお仕事なのかな。
私に気を遣わないでって言いたいのに。
一緒に住んでるのに家ではほとんど話せない。
あんまり話したくないみたいだから。
やっぱり、私のこと仕方なく置いてるんだろうな……。

あ、まただ。
髪がすかれる感覚。

気持ちいい。
私、こうされるの好きなのかもしれないな……。

…………でも、誰?
そういえば枕もいつもと感触が違うような。


「…………ん……?」


閉じていたくて仕方ない瞼を無理やりこじ開けると、目の前には白っぽい……薄い縦縞が入ってる……壁?
だけどこの壁、どこかで見たような気がする。

どこだっけ。
ああ、そうだ、社長のシャツ……?
それに、肌が見えるような……?……誰か……隣に……いる……?

え、嘘。


「……っ!」

「……あ、起きた?」


またも低音の艶やかボイスが聞こえ、疑惑が確信に変わってどくんと心臓が嫌な跳ね方をする。


「な、な、なんで……、しゃ、社長が……」


重石がとれたみたいに急激に目が覚め、目の前に広がる光景に息を呑む。

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