ぎゅっと、隣で……

大人達

　優一は、集団登校が終わっても南朋が気になり、南朋の家のインターホンを押した。


　南朋はいつも黙って、優一の後ろを歩いて着いてきた。


「優一、走って行こうぜ！」


　優一のクラスの友達が神社の前で声を掛けて来た。


　本当は南朋と玄関まで一緒に行きたかった。

　何故か南朋が心配で仕方無かった……　


　でも、ここで走らないと言ったら、友達に変に思われると思ったのだ。



「一緒に走る？」


　優一は南朋に聞いたが、南朋は首を横に振った。


　優一は南朋を置いていってはいけない気がしたが、どうする事も出来ず友達の後を追ってしまった。




　次の朝、南朋は家から出て来なかった。

　その次の朝も……


　朝、南朋を迎えに行くと、玄関から南朋の母の怒鳴る声が響いた。


　優一は、南朋を無理やり学校へ行かせる事が正しいと思えなくなった。


　南朋を、地獄へ突き落しているような気がしたのだ。



「和希、もう、南朋ちゃんを迎えに行くのは辞めよう……」


　優一の南朋を思っての言葉だった。