ぎゅっと、隣で…… 
 南朋は次の日から、朝学校に行けなくなってしまった。

 優一と和希が迎えに来てくれるが、南朋は玄関へ出て行けなかった。

 そんな日が続き、とうとう優一と和希は迎えに来なくなった。


 それが、益々母をイライラさせたのだろう。

 とうとう南朋は、母にまで頬を叩かれた。


 田川先生に叩かれている事を言えなかった南朋の頬は、痛みを通り越し悲しみだった。


 母は南朋を車に乗せ、学校の門の前で、泣きじゃくる南朋を引きずり下ろした。


 南朋は涙を拭きながら、教室へと向かった。


 地獄の教室へ…… 





 だが、不思議な事に教室では冷たい視線の友達が、下校時間になり門を出ると皆声を掛けてくる。


「一緒に帰ろう!」


 同じ方角の子達が、五、六人で南朋を囲んで帰った。



 南朋は、ちょっとこの辺では珍しい美人だった。


 クラスの子達は、南朋と仲良くなりたいのだが、田川先生が怖くて、クラスでは南朋に冷たく当たるしかなかった事を後で知った。



 南朋は、一か月も給食当番をやらされていた。


「南朋ちゃん、先週も給食当番じゃなかった?」


 給食室の前で声を掛けて来たのは優一だった。


「意見言わない子が給食当番だから……」

 南朋は小さな声で言った。



「そんな事あるのかよ!」

 優一の怒った声が、南朋は優一にもダメな子だと思われたと思った。


 高学年の校舎へ向かう優一の姿に、南朋は又お腹が痛くなった。



 南朋は学校でも家でも恐怖との隣合わせだった。


 学校ではなるべく皆と同じ行動をし、田川先生を怒らせないよう気を使った。


 家では学校での褒められたと言う嘘の話をして、いつのまにか、作り笑顔がいつでも出来るようになった。


 母は、明るい子になったと機嫌がよくなったが、学校での田川先生の罵倒は続いた。


 酷い時は、全校の前で、頬を叩かれた。

 合唱の時間の歌い方が悪いと……



 泣きながら学校へ行く一年が続いた……
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