君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
冷血男子の結婚観
「……何が、違うのですか?」

 ふいに声をかけられた。
 どうやら由真は、考えを声に出していたらしい。

 そして、声をかけてきたのは、いつも公園で見かけるジョギング姿の男だった。

「……しろがね、さん」

「やっぱり、黛さんだったんですね、どこかでお見かけしていたと思っていたんです」

 気にかけていたのは自分だけでは無かった、と、由真は踊りだしたくなる心を抑えて言った。

「私も、もしかしたら……と」

 しかし、それ以降の言葉が出てこない。

「ちょうど良かった、連絡先を交換したいと思っていたんです、ですが、黛さん、あの後戻って来なかったので……」

「急に、気分が悪くなってしまって……」

 運営の方には連絡済みではあった事だった。由真は、藍はカオス・ウェディング・パーティ運営と通じているのでは無いかと思っていたので、由真が途中退席した事についての理由を知らない事は予想外だった。

 ……あるいは、無関係である事を装って、あえて知らないふりをしている可能性もある。

「代ヶ根さんは、あの後、どなたかと?」

「いいえ、トーリも戻って来ませんでしたし、元々私は数合わせの付き合いでしたから」

「では、婚活目的で来たのでは無い、と?」

 由真も、目的は別だったが、それを語るわけにはいかない。あくまでも、由真は、結婚相手を探しているという体裁を取り繕わなくてはならない。

「……そうですね、私は、制度としての結婚に、あまり意味が無いと思っているので」

「そう……ですか」

 由真は、想像以上に落胆している自分に驚いていた。
 自分は、藍にどうあって欲しかったのだろう。
 婚活目的でパーティに参加し、自分を見出して欲しかったのだろうか。
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