恋し、挑みし、闘へ乙女
最悪の相手
「お嬢様、お誕生日おめでとうございます!」

興奮状態のミミが部屋に飛び込んできた。

「――ん? うん……ありがとう」

目を擦りベッドサイドの時計を見るが五時五十分。

「でも……まだ起床には早いわよ」
「早くありませんよ」

ミミが明るく言いながらザザッと音を立ててカーテンを開ける。途端に真っ白な日の光が乙女の視界を覆う。

目を細めながら「いいお天気」と呟く乙女だが、「お見合いですよ。目一杯お洒落をしなくちゃ!」のミミの言葉にズンと心が暗くなる。

「さぁ、起きて下さい」

乙女のそんな思いなど知らず、ミミが勢い良く掛け布団を剥ぐ。

「準備って……こんなに朝早くから?」

あの日以来、乙女の闘志はどこに行ってしまったのかお留守だ。あまりに大人しい乙女にミミが気味悪がるほどだった。

「そうです。やらなきゃいけないことがたくさんあるのですから、さあさあ、起きて下さい!」

反対にミミはやる気満々だ。たすき掛けした赤い紐がそれを象徴しているようで、乙女はゲンナリするも、いつまでも寝ているわけにもいかずノロノロと起き上がる。

「まずは入浴を済ませて下さい。ミルク風呂です。お肌にいいそうです」
「ミルクをお風呂に入れたとでも言うの? 勿体ない」

乙女がフルフルと首を振るとミミが目くじらを立てる。

「お嬢様、ケチにも程があります。今日は決戦日ですよ!」
「私、戦は好きじゃないの!」
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