副社長の一目惚れフィアンセ
11.恐ろしい計画
もうすぐ10月になるというのに、ナオはまだ忙しそうにしている。

詳しくは聞かないけど、異物混入の件でまだやることがたくさんあるんだろう。


マンションに帰ったらコンシェルジュに呼び止められた。

「お帰りなさいませ、水嶋様。お手紙を預かっております」

…私はまだ水嶋じゃないけど、そこは気にしないでおこう。

「私宛ですか?主人じゃなくて…」

「ええ。ご主人に見られないようにとのことです」

…主人でもないけど。主人だなんて照れ臭い響きだと、あとになって顔が火照った。

受け取ったのはシンプルなレターセットの封筒だ。

『明里さんへ』

と書いてあるけど、裏面に差出人の名前はない。

不思議に思いながらも、待ちきれずにエレベーターで封筒を開けた。

中に入っていたのは二つ折りの紙。


『話があります。

明日7時、フローラルカフェで。

         樺沢莉乃』


…莉乃さん?

ワイン事件のトラウマなのか、名前を見るだけでおののいてしまう。

話ってなんだろう。今さら何を話すことがあるんだろう。

考えるだけで動悸がしてくる。

そういえば、ナオに黒岩さんと莉乃さんが会っていたことも話していない。

その後黒岩さんが仕事に行っているのかどうかも、ナオには聞いていない。




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