エリート上司の甘く危険な独占欲
「颯真さんは毎朝しっかり料理するんですね」
「会社まで車なら二十分くらいだし、このくらい余裕だよ」
「そうですか? 私は朝は一分一秒でも寝ていたいタイプです」

 颯真は華奈のトーストを取り上げ、バターを塗り始めた。

「朝はたいてい早く起きてジョギングしているんだ」
「えっ、平日もですか?」

 華奈は驚いて彼を見た。

「ああ。朝の海岸通りは気持ちいいよ。朝日ってなにか特別なエネルギーがあるんじゃないかな。頭もすっきりして、体にもエンジンがかかる」
「私にはとてもできません……」

 朝が弱い華奈には早朝ジョギングなんてとても無理だ。

 颯真はバターを塗ったトーストを華奈の皿に戻し、自分のトーストにも塗り始める。

「ありがとうございます」

 会社で彼の焦っている姿など見たことがない。いつ見ても余裕を感じさせるし、部下だけでなく上司からも信頼が厚い。担当したショップの売上が好調で、何度も社長賞をもらっている。本当にできる大人の男性とは彼のような人のことを言うのだろう、と華奈は改めて思った。

「颯真さんの座右の銘ってなんですか?」

 颯真は少し考えるように手を止めた。座右の銘のない人もいるだろうから、変な質問だったかな、と華奈が思ったとき、颯真が答える。
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