〜starting over〜
……悪い事しちゃったな。
横に倒れ込んで、ゴロンと寝転がってテーブルの上のリモコンを取りテレビをつける。
都会はチャンネル数が多いな~。
感心しながらも、見たいものがあるわけでもないので適当につけておく。
妙に怠い身体をフソァーに預けて、上滑りだけしていく画面を、ぼ~と眺める。
広い部屋に1人。
急に視界が歪んで、すっと消えた。
喉元が絞められたように苦しい。
息苦しさは、決して体勢の所為ではない。
目に見えない痛みを、耳では聞こえない叫びを、心はシッカリ訴えてくる。
今私がここにいて、今感じるこの痛みが、昨日の出来事が夢ではなく現実であると語っている。
両親が居ない。
友達も、恋人も居ない。
皆の顔が浮かんでは打ち消して。
胸の苦しみだけが残る。
目元に手をやると、濡れていた。
人の身体は不思議だ。
それを確認しただけで、堰を切ったのように次々と涙が溢れた。
私は、何に泣いてるんだろう。
疲れた。
心が、痛くて痛くて、痛くて痛くて。
痛くて痛くて痛くて痛くて、たまらない。

「私には、何も残らなかった―――」

1人呟いたつもりだった。

「ない物は、これから作ればいいだろう」

思いもよらぬ返答に飛び起きると、相変わらず不機嫌そうな湊さんがたっていた。
物音1つしなかったのに。
私を置いた後、すぐ仕事に行ったんだろう。
昨日の服装のまま、疲れた感じが、余計不機嫌な顔を際立たせている。
ティッシュ箱を渡されて、徐にペーパーを引き抜くと涙を拭って鼻をかむ。
親戚とはいえ、知り合って間もない人泣き顔を見られるのは、非常に気まずくて恥ずかしい。
俯きかげんになってしまうのは、許してほしい。
そんな私を知ってか知らずか、湊さんは隣に座ると続けた。

「やり直せない物なんてないんだ。ただ勇気と決断と忍耐力があればなんとかなる。人の進化の過程はそんなもんだ」

仏頂面で、たぶん励ましのつもりらしいけど、話が飛躍しすぎて呆気にとられた。
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