〜starting over〜
その所為か、涙も引っ込んでしまい、笑いたいのを我慢。

「湊さん……、ちょっと変わってるって言われる?」

私の含み笑いの所為か、物凄く剣呑な空気に。

「ご、ごめんなさい」

素直に謝った。

「でも、ありがとう。ごめんなさい……昨日色々あったから気持ちが不安定で……」

子供の私は、何の役にも立てない……。
借金の額も、昨日聞いても教えてくれなかった。
たぶん、私を隔離するくらいだから想像もできない額なんだろうな、とは思うんだけど、解らない。
傍に居ても足手まといになるくらいなら、これで良かったんだと思いたい。

「おまえとは、今後の事について話したいところだけど……。今日は気持ちが落ち着くまでゆっくりしてろ。何処か遊びに行くなり、1日中寝てるなり、友達と連絡とるなり、自由にすればいい。制限はしない」
「私……友達いません」
「昨日追いかけてきてたヤツは……」
「あれはっ。あれは昨日も言ったと思うけど、たぶん元カレの類……?」

言葉尻がしぼんだ。
だって、今では付き合ってたのかすら解らないんだもん。

「なんだそれ?」

眉間に皺を寄せて、呆れた口調。

「たぶん、付き合ってたんだけど……。今はもう……よく解らなくて」

声が震える。
また涙がこみ上げてきて、落ち着こうと、大きく深呼吸した。
静かな部屋に、テレビから流れる音だけが響く。
私と湊さん。
ほぼ初対面で、ずっと不機嫌顔の湊さん。
それなのに、黙って聞いてくれるから、気持ちを整理する意味でも、荒れ狂う心の蓋を少し開けてみた。

「小さい頃から、とても仲が良い友達が居たの」

一気に流れでそうな感情の波を順番に掬い上げて、ポツリポツリと呟く。
不機嫌顔なのに、静かに耳を傾けてくれるギャップに、私を冷静にしてくれた。

玲奈とは家が近所で、保育園からずっと一緒だった。
おままごとをしたり、お人形で遊んだり、公園でブランコを押しあったり。
小学校に上がってからも、一緒にランドセルを背負って登校したし、お揃いの靴やお道具袋を親に強請って買ってもらった。
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