優しい音を奏でて…優音side
大学生
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大学生

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─── 18歳 春 ───

俺たちは、大学生になった。

俺は、東京の難関国立大に無事合格したため、一人暮らしを始める事になった。

奏は、地元の国立大。

4年間、離れ離れだ。

出発の前の日、奏は、俺の部屋にいた。

また、母の策略だった。


「ゆうくんとは、離れててもいつでも会えると
思ってたけど、明日からはもう会えないん
だね。」

奏が寂しそうに俯いて言った。
肩が少し震えて見えた。

俺は、思わず、奏を抱き寄せた。

「奏が会いたいって言ったら、俺はいつでも
帰ってくる。
新幹線なら、ほんの2時間の距離だから。」

奏の華奢な体は、力を入れたら、折れてしまいそうだった。

奏は、逃げる事も、拒む事もなく、俺にされるがままに抱き寄せられていた。

俺が体を離すと、奏は顔を背けた。

涙を拭っているようだった。

俺は、もう一度、背中から抱きしめた。

「奏、俺の事、忘れないで。
俺は、奏の事、絶対に忘れないから。」

奏はこくんと頷いたきり、何も言わなかった。


しばらくして、奏は、胸の前にある俺の手を解いて、俺の方に向き直った。

「ゆうくん、東京でもがんばって。
応援してるから。」

そう言って、にっこり笑った奏の目は赤かった。


俺はこの時の奏の顔を、一生忘れないだろう。

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