社内恋愛狂想曲
浮気現場目撃
午後の仕事が始まり一時間ほど経った頃、必要な資料を探しに資料室に向かう途中で、わずかに開いていたドアの隙間からそれを目撃してしまった私は、絶句して目を見開き立ち尽くした。

昼下がりの会議室では、若い男女が抱き合ってキスを交わしている。

男が慣れた手つきで女の華奢な腰を抱き寄せた。

その様子から、二人の親密な関係が昨日や今日に始まったものではないことは明らかだ。

「今日も仕事の後、家に行っていい?」

「んー、いいけどー……最近毎日だよ?彼女のこと、ずっとほったらかしにしてていいの?」

女は胸元に這わされた手に特に抵抗する様子もなく、妖しげな笑みを浮かべた。
 
「いいのいいの、あいつ全然気付いてないから」
 
男はそう答えると女の体の曲線に手を這わせながら貪るように激しいキスを繰り返し、女は時おり吐息混じりの甘い声を小さく漏らして、恍惚の表情でそれを受け入れている。

待て待て、ちょっと待て。

二人ともここは会社だってわかってる?!

しかも就業時間内なんだけど!

私が目の前で繰り広げられる光景に戸惑い、混乱する頭の中で精一杯のツッコミを入れていると、女は重ねられた唇を離して男をじっと見上げた。
 
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