クールな次期社長と愛されオフィス
私、堂島アコ　２７歳。

世界でもトップを誇る宇都宮商事・秘書課勤務。

いわゆるバリバリのキャリアウーマン。

ヒールの音を響かせて都内でも目立つ場所にそびえ立つ自社高層ビルに入っていく･･･って言いたいところだけど、やんごとなき理由があって寄り道をする。

本社のある駅の一つ手前で降りた。

駅沿いの道から一本逸れた路地に入る。

路地に入った途端一気に雰囲気が変わる。

タイムスリップしたみたいな懐かしい空気があふれていた。

私の大好きな場所。

腕時計を見る。

うわ、時間ぎりぎり。

慌てて肩からかけていたバッグを胸に抱いて走った。

『丸宮珈琲店』

と書かれた看板を見上げながらその扉を押した。

カランカランと少し低いベルの音が心地よく私を迎えてくれる。

「お、来た来た。おはよう、アコちゃん」

カウンターの向こうからひょっこり顔を出したのはこの珈琲店のマスター、丸宮　匠。

大学でこちらに上京してきた時から、親代わりとも言える私の唯一の理解者。

「おはようございます！遅くなっちゃいました。急いで外掃除してきます」

私は自分のバッグをカウンターのイスの上に置くと持って来たエプロンを被って外に出た。

お店の外を美しくするのが私の毎朝の日課の一つ。

玄関の扉を彩る色とりどりの花たちに水をやり、掃き掃除と水まき。

キラキラとした朝日が丸宮珈琲店の屋根を暖かく照らし始めていた。





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