クールな次期社長と愛されオフィス
そのお店はオルゴールショップだった。

中はとても広くて、見たこともないくらい様々な種類のオルゴールがひしめき合うように置かれていた。

小さいものから大きなもの。

曲も自分で選べる。

部長がオルゴール聞いてる姿がふいに浮かぶ。

似合わないようで似合うような気がした。

疲れている部長がオルゴールの繊細な音色を聞きながら、うとうとしている姿。

いいかもしれない。

いつもお世話になってる部長に、少し奮発したくて、手のひらサイズだけれど、スワロフスキーの繊細なバラが細工されたオルゴールにした。

バラは回転するたびに眩く輝く。

どことなく繊細で、光輝くバラは部長のイメージにぴったりだった。

曲は・・・。

私が好きな曲。

「アメージング・グレース」を入れてもらった。

シックな赤の包装紙に濃紺のリボンを結んでもらう。

持って来たリュックにそっと忍ばせて、ホテルに戻った。

ホテルの部屋はもちろん部長とは別々に取っている。

今回は付き添い秘書の立場だからね。一緒の部屋だなんて言語道断。

部長は一緒の部屋でいいじゃないかなんてまた意地悪な顔をして言ってたけど、未だに部長と二人で朝まで過ごしたことのない私にはまだ、そんな冗談を軽く流すことすらできない。

自分の部屋のカードでロックを解除し、中に入ると、シングルにしてはもったいないくらい広い部屋に驚く。

しかも窓からは小樽の夜景が一望できた。

部長が選んだだけあって、さすがの5つ星ホテル。

そんな優雅な部屋に入った途端、1日歩き回った疲れが出てベッドに倒れ込む。

私って、疲れたら絶対眠りこけちゃうってわかってるのに。

部長が帰るまでは寝ないで置こうと思っていたのに、気がついたら夢の中だった。
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