クールな次期社長と愛されオフィス
「え?本当ですか?」

まさか、こんなありがたい展開になるなんて。

驚きと嬉しさで目を大きく見開いて友江さんを見つめる。

友江さんはそんな私を見て吹き出した。

「ほんと、あなたって楽しい人ね。もちろんよ。何かあったらこの名刺の連絡先に電話して」

実を言うと、最近秘書の仕事の忙しさと部長の心地いい家で過ごしているせいか、自分のカフェを持つ夢が薄れていた。

オリジナルブレンドティの開発も、正直行き詰まっていたんだけれど、こうして友江さんと出会えたことで私の夢への気持ちが再燃したみたい。

胸の奥が久しぶりにワクワクと熱くなっていた。

これも、部長のお陰だよね。

ホテルに戻ったらお礼言わなくちゃ。

カフェを後にすると、まだ午後2時前。

部長も夕方にならないとホテルには戻らないだろうから、その間、小樽の街を散策しながら部長にお礼にお土産を買おうと思った。

赤レンガ倉庫が建ち並ぶ景色は異国情緒があり、どこを切り取っても絵になる。

市場も活気が溢れ、大きな蟹や新鮮な魚が丸ごと売られていた。

東京には見られない景色に、全く飽きない。

「お姉ちゃん、この蟹おいしいよ!」

と声をかけられる。

思わず引き寄せられそうになったけれど、さすがに蟹を部長のお土産にするっていうのはあんまりだよね。

市場を抜け、若者が溢れるおしゃれな通りに入る。

とりわけ人だかりができているお店の前で足を止めた。
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