うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「キミは今日定時で上がってくれていいから」

「えっ? しかし会食は……」

戸惑う私に社長は嬉しそうに言う。

「会食は私ひとりで行くからいい。だから今夜は廉二郎とゆっくり食事でもしてきなさい」

「しょ、食事って……」

驚き声がどもる。そんな私に社長は続けた。

「会議前に廉二郎から連絡があってね。今日、仕事が早く終わりそうだからキミを食事に誘いたいと思ったらしく、甲斐甲斐しく井上くんの予定を聞かれては、キミを会食に連れていくわけにはいかないだろう」

「しかしっ……!」

社長の好意はありがたいけれど、仕事は仕事だ。それはきっと副社長もわかっているはず。

「いいからいいから! それに正直、今夜の会食にキミを同伴させるか迷っていたんだ。彼とはふたりっきりで腹を割って話した方がいいと思っていたからね。だから気にすることなく、廉二郎との食事を楽しんでくるといい。……会うのは久しぶりなんだろう?」

どうやら私と副社長の動向を、社長はしっかり把握されているようだ。
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