秘密の恋は1年後
俺のペースに合わせてついてくるまひるは、チラチラと左側から俺に視線を投げて様子を窺ってくる。
これが俺のデフォルト。
人付き合いや仕事のためにかぶる〝いい人の仮面〟の内側に、今までの俺はいない。
それに、俺の本性を後出しするのは狡いと思ったまでで、後悔はない。
優しくしているうちに靡いてくれたらと思ったのに、肝心の気持ちは明かしてくれないから、強引に同棲を始めたけれど、それで彼女の心が手に入るのか手探り状態ではある。
彼女がうろたえるのも十分理解できる。
だけど、俺はこういう男で……なんて説明をするつもりはさらさらない。
これから一緒に暮らしていけば嫌でも分かるだろうし、俺のことばかり考えるくらいで彼女はちょうどいいはずだ。
「ん。手、繋ぎたいだろ?」
「…………」
俺が差し出した手に、遠慮気味に重なった小さな手は、俺よりちょっと冷たい。
徒歩五分の距離にあるスーパーまで、彼女の手を取って再び歩き出す。