気がつけば・・・愛
温かい気持ち
見られたくない顔をハンカチで隠しながら
手鏡もないのに誤魔化す

早くしなきゃと焦る気持ちも
優しい目で待っていてくれる住職にホッとして

ただそれだけで優しい気持ちになった


「もし、よろしければですが
お昼を一緒にいかがですか?」

新たなお誘いに戸惑う

「え?、いや、あのお邪魔しちゃ悪いので
私の事はお構いなく」

そこまで図々しいことは出来ないと
断ったけれど
大したものではないと強引に誘われ

最後は頷いた

「では、支度しましょう」

サッと立ち上がった住職に続き
立ち上がろうとするも

長時間の正座のせいで
両足の感覚がない


先ずは膝立ちして...それから
痺れが襲うことを想定するのに
膝立ちすら出来そうにない現実

とりあえず横座りになって
血液を流して・・・


頭で考えた身体の動きとは全く違い
動こうとしてバランスを崩し
派手に畳に突っ伏した

バタンっ

「わ、大丈夫ですか?」

「だいじょぶ‥じゃない‥です」

40歳にもなって
痺れで醜態を曝すとは・・・

畳の上で悶えながら
迫り来る痺れに耐えていた

「可哀想に」

近づいて声をかけてくれる住職に
恥ずかしさで顔も上げられない

「クッ」

下唇を噛み締めて
痛みを逃そうとするのに
目を開けられない程辛い痺れに

差し出された手に
しがみついてしまった


ーー恥ずかしいーー


記憶を巡らせてもこんなことは無い
まさか正座でこんな目に遭うなんて

足が自分のものだと認識出来るまで
住職の手をひたすら握っていた

冷静に考えれば
恥ずかしい限りなのに
住職の人柄か...状況からか
流れに身を任せていた


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