バイバイ☆ダーリン 恋心編  番外編完結しました

─♢天の川を渡るのは♢─


あの事件以来渡米して3年が経ったが、その間、理人は一度も日本に帰国していない。

父や兄から数年は死に物狂いでやってみろと言われ、このまま一時的にも帰国する訳にはいかないと、彼は勉強に明け暮れる毎日を過ごしている。

大学生活は至って順調で、時には友人達と飲みに出掛けたり、誰かのアパートに集まって持ち寄りパーティーをしたりと、結構アメリカ生活を満喫しているのだ。

しかし、生来の美食家であった理人は、いわゆる“アメ食(こってりしたフツーのアメリカの店での食事)”が大の苦手であったので、毎日毎日ハンバーガーやらフレンチフライなんかで過ごせるはずがない。

お気に入りの日本食レストランは、特に日本人にとっては貴重なもので、理人も偶に一人でこっそりと行くのだが、如何せん、お値段設定が結構高い。

でも、美味しい本物の日本食を提供してくれるソコは、日々の生活を切り詰めてでも行きたくさせられる、贅沢だけれど、理人にとっても大変重要な憩いの場でもあるのだ。

彼はここ最近、アメリカでの生活が案外性に合っているのかも知れないと思い始めていることに気が付いて、自分でも驚きであった。

日本での悪行が消える訳ではないが、少しでも真っ当な人間になって、せめて、家族だけでもビックリさせてやろうと思うようになった。

ああ、忘れてはいけない人物が一人、悠輝にも認めてもらえる人間になってやると、日々研鑽に励んでいる。


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