フレッドは片ひじをつき、自身の腕の中で安らいだ寝息を立てるオリヴィアを見下ろした。

 ベッド脇のチェストに置いた洋燈《ランプ》から、淡く柔らかい光が彼女の頬を照らしている。長い睫毛の影が、腫れぼったくなった目の下に色濃い影を落とす。そっと頬を撫でると彼女が小さく身じろぎした。
 
 彼女が寝ているあいだにグレアム家には自分が送ると連絡をしたが、彼女を起こすのが忍びないのと、彼自身が別れがたいのとで、踏み切れずにいる。

 内心を打ち明けてくれたときの、心細そうな目を思い出す。

 社交界で「氷の瞳」と揶揄された瞳とは似ても似つかないものだった。再会したときでさえ、自分の前では笑っていた。家族と離ればなれになってもなお、思慮深い彼女がフレッドのためにと連絡も寄越さずに一人で全て飲み込もうとしていたことを思うと、やるせなくなる。

 それと同時に、その彼女を怖がらせてしまったことは後悔してもしきれない。ひとつ間違えば、それこそ彼女の心を凍らせるところだった。
 だから彼女が自らフレッドの懐に飛び込んできたことが、いまだに信じられない。硬く強張っていた蕾が、艶《あで》やかに花開いたような変化だった。

「きみは、強いよ」

 彼女の髪を撫でると、無意識なのだろう、彼女がフレッドの胸に頭を擦り寄せた。

「だからきみの弱さを、僕に預けてくれ」

 彼は深く寝入っているオリヴィアの横髪をするりと耳にかけると、身を乗り出して彼女のこめかみに口づけた。