ラッセルが目だけで続きをうながす。フレッドは視線を合わせて「早速ですが、まずは僕個人のお願いから」と敬礼した。

「オリヴィア嬢を僕にください」
「私はもうあれの親ではない。伺いを立てる相手が違う」
「もちろん、グレアム公にもお願いするつもりです。ですが、彼女は今もラッセル殿を心配している。彼女の父親は、貴方だ」
「……あれは何と言っている。娘は自分に色目を使う男が嫌いだが」

 やはり知っているのだ。

 フレッドは一歩前に出る。後ろに控えた兵士が警戒して腰に手をかけた。

「貴方は脱税の目的を話してはくださいませんでしたが……。脱税によって得た金は、彼女を守るために使ったんですね。……違いますか」

 ラッセルは肯定も否定もせずに、灰色の瞳でフレッドを見すえた。オリヴィアの瞳の色は、亡くなった母親譲りなのだろう。

「知っているのか。そうか、あれが話したか」

 フレッドは彼の視線を真正面から受け止め、うなずいた。

 帳簿への虚偽記載は、オリヴィアが隣国からの不審者に襲われかけた事件と時期を同じくして始まっていた。