無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「じゃあ、二次会に行こう!」

彩月は思ったよりもお酒が強かった。駿太郎もアイドル顔とはいえザルだ。これまでは、仕事帰りのランニングが終わると自宅に直帰していたから、飲みに行くこともなかった。歓迎会は来週なので、二人はお互いにそんな事も知らなかった。

体育会系の彩月と違い、引きこもりがちな駿太郎はあまり飲み会が好きではなかった。しかし、今は何となく彩月といることが楽しい。それに、女性を一人で飲みにいかせるわけにはいかない。

「ここでーす」

彩月が連れてきたのは、お洒落なshot bar。綺麗な30代くらいの女性がバーメイド(女性のバーテンダーの呼称)をしている。

「あら、彩月ちゃん、いらっしゃい。随分イケメンの彼氏を連れてきたわね」

バーメイドは駿太郎に百合子と名乗った。

「同僚の駿太郎くんです」

いきなり下の名前で呼ばれて驚いたが、悪い気はしない。

「あら、でも、男の人を連れてくるのは瑛太くん以来よね」

駿太郎は、彩月が男とここに飲みに来ると聞いてなぜかカチンと来ていた。

それを見透かすように、百合子がクスリと笑って駿太郎に目配せをして言った。

「彩月ちゃんのお兄さんよ」

駿太郎の無表情は変わらないが耳の端が赤く色づく。

「瑛太くんは彼女に夢中で、今や私なんか相手にしてくれませんよ」

彩月が頬を膨らませてカウンターテーブルに顔を埋めた。

"こんな甘えた表情もするんだ"

駿太郎は内心、酔った彩月に興味津々だったが、もちろん無表情は崩さない。

「だから今はイケメンくんに相手してもらってるんだ?」

「そうでーす。駿太郎くんはとっても優しくて努力家なんですからねー」

「はいはい、よかったわね」

百合子がクスクスと笑って彩月の頭を撫でる。そんな甘えたの彩月を見て、駿太郎は自分の胸が高鳴るのを自覚し始めていた。
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