恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
拾壱・温かな腕の中で

飛龍と鳴鈴が共に皇城に戻ったのは、七日後のことだった。

もちろんまだ飛龍の傷は癒えきっていない。星稜王府のことを心配する彼と側近は、すぐに出発すると言って聞かず、なんとか動けるようになるまで、李翔と鳴鈴が必死で止めていたのだ。

何の連絡もせず馬車で帰ってきた一行に、門前広場に出てきた皇帝は目を剥いた。

「いったいどういうことだ、飛龍」

「連絡をすれば、帰り道に待ち伏せされると思ったもので」

階段の上の皇帝に向かい、膝をつく一行。皇帝の後ろには武皇后が控えていた。

ちらりと盗み見た彼女の顔は、真っ白だった。表情をなくし、呆然と突っ立っているように見える。

「結果から申しますと、萩がこの国に侵攻しようとしているというのは、誤報でございました」

これは間違いない。結局李翔が、飛龍たちが動けるようになるまでに手を尽くして調査した結果だった。

「そうか。ではその傷はいかようにして、誰に付けられた」

皇帝は飛龍の着物からのぞく包帯に気づいた。

「ここから共についてきた兵士たちです」

「なんだと?」

「何者かが私を陥れたのです。兵士たちが一人も戻らないのが、その証拠。私たちは生き延びるため、彼らを手にかけました。お許しいただきたい」

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