一途な御曹司に愛されすぎてます
　目が覚めた瞬間、どこまでが夢でどこからが現実なのか判断がつかなくて、しばらくの間心臓がバクバクと嫌な音をたてていた。


　そのままベッドに横たわり、閉ざされたカーテン越しの鈍い朝日をじっと眺めているうちに、少しずつ頭の霞が晴れていく。


　そしてようやく夢と現実の境界がはっきりして、胸を撫で下ろした。

　ああ、嫌な夢だった……。


　ぐったりする全身を支える最高級マットレスは、文字通り夢見心地の睡眠を約束してくれるはずなのに、昨日も今日も連続で安眠できなかったなんて。

　よほど私の体は庶民仕様にできているらしい。


　ゆっくりと起きあがって窓に歩み寄り、カーテンを開けてから外の雨模様に気がついた。

　薄い灰色に染まった空から降る無数の糸のような霧雨が、窓を濡らして静かに流れ落ちていく様を見て、小さくため息をつく。

　今日は旅行の最終日なのに、雨か。
　しかも明日からはまた普段通りの生活が待っているかと思うと、ますます気分が重くなった。

　現実離れした二日間を過ごした体と心が、日常に帰ることを拒否している。
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