一途な御曹司に愛されすぎてます
 気分が沈んだまま窓の外を眺める私の脳裏には、さっきからずっと階上さんの笑顔が浮かんでいる。

 昨日、ふたりで教会を見学した後、階上さんは私と一緒に高原を散歩しながら午後のひと時を過ごしてくれた。


 緑色に輝く高原に放牧されている牛や羊たちが、悠々と草を食む姿を眺めながら、ふたりで過ごした穏やかな時間は最高だった。


 昼食は、バトラーさんが専用カートを自ら運転して届けてくれたピクニックセット。

 低温殺菌された濃厚な牛乳や、まろやかな味わいのチーズや、新鮮で甘いフルーツを手触りのいい素朴な木の器でいただいた後、牧草で設えた大きなソファーでひと休み。


 かっこいいスーツ姿のイケメンが、牧草の上に長い足を投げ出してリラックスしている姿が写真に撮りたいくらいサマになっていて、横目でチラチラ眺めながらドキドキしっぱなしだった。


 やがて日が傾き、空一面が優しい黄昏色に染まる別れ際、彼は『明日また、あなたのお時間を私にください』と私の耳元で囁いてくれた。
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